築地魚市場だからねマダラであって,スケトウタラのことではありません。マダラの雄の白子(精巣)は「キク」とも呼ばれ,純白の菊の花を連想させる。魚市場で買っても結構高いのですが,それもそのはず,高級料亭では一口大のものを紅葉おろしでいただく。ばくばく食べるものではありません。これがコクのあるねっとりした食感。絶妙な味でもっと食べたくなるのですが,少しでやめておくのがいい。 実はこの天麩羅が実に旨いのです。熱々の白子の天麩羅に軽く塩を振ってかぶりつくと湯気がスーと舞い上がる。ハフハフと言いながら残りもいただく。生でいただくのとはまた違って,「美味い」と表現するより他はない。 それで生でいただく,あるいは天麩羅にするまでにどのような処理をするかと言うと, まずたっぷりの氷水を用意する。その間にヤカンでお湯を沸かし熱湯を準備する。ざるに新鮮な白子のかたまりを入れて,この上から熱湯をジャージャーかける。白子の色が多少変わる程度で結構です。この熱くなった白子をすぐにたっぷりの氷水に入れて絞めます。これで終わり。はさみで一口大にちょん切って,水気を除いて,紅葉おろしをかけていただく。あるいは氷水で溶いた天麩羅粉をにつけて,天麩羅にする。あまり長い時間熱を通さなくても結構です。塩をパラパラと振っていただきましょう。たったこれだけなのですが,これで料亭の味が自分の家の台所で完成。 白子は一パック1000円前後,これで天麩羅なら3人前はできますから,自分でつくるといかに安上がりか,ということですね。スケトウダラはこのような方法では食べられません。
トラフグは漢字では「虎河豚」と書くのですが,なんで虎なの? この魚に虎模様なんてついていませんから,これはもう名前の由来がわからない。フグのことを「鉄砲」という地方もあるそうで,これは当たると死ぬからですね。じゃ,フグってそもそも何から来たの,となりますが,フグは海底の砂を,海水を吹き付けて舞いあげ,海底にいるゴカイやイソメなどをつかまえます。それで吸った海水を「吹く」から,「フク」と呼ばれていたとか。福の神にも通じる発音ですが,江戸時代になってなぜか「フグ」となったようなのです。 「フグは食いたし命は惜しし」,フグの卵巣と肝臓にはあのテトロドトキシンという神経毒がたくさん含まれているから,今までこれで何人死んだことやら。でも筋肉(身の部分ですね)と精巣,それに皮には毒が含まれないので,ちゃんと調理すればこれらは食べられるのですね。この調理は基本的には資格のある人だけができるのですが・・・ 大きな天然物が最高に高いそうですが,養殖物でもそれほど安いとは言えませんね。この養殖物,毒はフグが食べるものに含まれているらしく,だからこれを与えなければ毒のないフグができるというわけ。これなら誰でも,資格のない人でも調理できるので大助かり,と思いきや,これがお役人の手にかかると,「ダメです」となる。安全が100%確かめられたわけではないから,というのでしょうか。とにかくお役人はダメな理由をあれこれ挙げる天才ですからね。誰でもできるとなると,あの資格試験を受ける人がいなくなって,お役人が権力を振るえなくなる??? これが理由かな。 トラフグは刺身が美味いのですが,焼いても,唐揚げでも,それに河豚ちり鍋でも,何にしても美味いですね。白子は焦げ色がつく程度に焼いて,フーフー言って食べるのが最高ですね。とろりとした食感が何とも言えませんな。
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